2010-06-22 17:50:07

遠藤利克 「空洞説・2010 AKIYAMA」

この画廊スペースに移って5年、5回目の個展となる今回の展示は、直径3.6m、高さ2.2m、画廊の奥半分を埋め尽くすような樽状の立体。  素材の木は焼き焦がしてタールが塗ってある。  視覚に飛び込んでくる、黒く光る表面とその臭いは正に遠藤のものである。

入口から俯瞰すると、円環状の淵と僅かに中の空洞が覗ける。
それ以外の場所からは、作品を見上げるだけ、視線は宙吊りされ、全体を見ようと彷徨う。 近付いて、見えるのは表面の美しい質感と曲線の持つ肉感的な表情。圧倒的な存在感なのに、圧迫感はなく包み込まれるような安心感がある。

思い直して、もう一度入口に立って眺めると、作品全体が漸くはっきりする。  すると何故か物質的形態が影を潜め、中心の空洞の方が気になり、中を見たい欲望に駆られる。
観る者は、この時点で様々に自問することになるだろう。


「空洞説」シリーズは既に5回程になるが、「空洞」の表現方法は様々で、必ずしも中心が空洞になっている訳ではない。 
遠藤の言う「空洞」とは、「空」でも「無」でもなく、視覚的には見えないが、光、振動、気、原子や粒子といったエネルギーが充満している磁場なのではないだろうか。

今回初めて円筒形ではなく、球形に近い形態になっているが、今後更に形が変化してゆく可能性もあるような気がする。

要するに遠藤はあの手この手で、人間存在の意味を問い続け,人間の歴史を水平の時間軸で考えるのではなく、原初から垂直に積層してゆく構想を思い描いているからこそ、常に現代の問題意識がぶれないのだと思う。

T/A

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2010-03-18 14:35:34

楕円による円の克服

鈴木繭子・大室佑介―ピント 焦点―
今井大介・大室佑介―眼の構造、あるいは重力―

 大室佑介の設計による展示空間に入った時、直感的にイコノロジーの祖であるアビ・ヴァールブルクの文化文学図書館を思い出した。以下、松岡正剛による説明を引用されたい。

 銀行家であって資産家でもあったヴァールブルクは、1925年にハンブルクに借財と私財を投じて「ヴァールブルク文化科学図書館」をつくった。ゲルハルト・ラングマークとフリッツ・シューマッハーの設計である。玄関には記憶の女神ムネモシュネの名が刻まれた。いわゆるヴァールブルク文庫の登場だ。
 1階が楕円のホールや閲覧室である。ヴァールブルクはずっと「楕円による円の克服」を、すなわち「バロックの知」を主張していたから、なんとしてでも円を超える楕円にこだわった。
(松岡正剛の千夜千冊 エルヴィン・パノフスキー『イコノロジー研究』より)
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0928.html

 ヴァールブルクはケプラーによる楕円軌道理論に強く影響を受けている。1つの中心をもつ正円的思考よりも、楕円的思考は中心を2つないし複数持つことで、多義性や曖昧さを含み持つ。それゆえに今回大室の用意した展示空間は、鈴木繭子および今井大介という美術作家、そして観者に対して創造―想像の余地を残し、作品とそれをとりまく環境が拮抗する両極の力を画廊空間に現出させたのではないだろうか。

※しかし大室によると今回空間が楕円に至ったのには、私の想像とは異なり、共作家の鈴木らと様々な思考・議論が重ねられていたらしい。今後何らかの機会にその思考・実践プロセスを披露していただきたいと強く願う。

清水彩

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2010-03-04 18:56:22

実験的な二つの展覧会

鈴木繭子・大室佑介ーピント 焦点ー
今井大介・大室佑介ー眼の構造、あるいは重力ー

画廊空間の中に楕円形の白い空間を造り、そこに作品を展示すると言う企画を立て、建築家、大室佑介が白い楕円の壁(2・4メートル)と床をベニヤ板で作成、彫刻家の鈴木繭子が、そこでインスタレーションを展示した。

鈴木はこれまで場所性を生かした繊細な作品を発表してきているが、今回は空間自体に表情がなく、仮説空間であるため、関係性を持たせることが難しかったようである。
ホワイトキューブの中にホワイトオーヴァル、中に入ると楕円の上部と四角い画廊の天井との差が1メートル程あるので、微妙な揺らぎを感じ、目眩に似た不安な感覚に陥る。
鈴木の作品はその感覚と共振するように思えるが、しかし、やはり個展の場合と比べると双方が気を遣っている印象を受けた。

その後、大室はその楕円の壁と床を黒色に塗り替え、今度は彫刻家、今井大介が同じ場所に粘土で作品を創って展示した。

今井は白い空間も見ている。その際感じた歪みから、眼の構造について考え、本来倒立して存在する物を網膜で反転させてみている事から重力に考えが及んで、タイトルを決めた。 重力を視覚化する。  楕円の壁の最上部から垂れ下がる、襞のある布状の粘土の作品。 反対側の床にはやはり粘土の山が創られた。
白黒反転した楕円空間が、作品と渾然一体となって拮抗しているような印象が強かった。

今回、後半の黒い楕円空間は、特に予定していた訳ではなく、どちらかといえば思いつきで色を塗り替えてみたのだが、建築家、彫刻家双方にとって実験してみて良い結果となったようだ。

通常、美術館の壁は白、博物館のそれは黒、だそうである。

T/A

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